結婚が武器になる理由は、「冒険ができる安定」を手中にしたことになるからである。前述の二人のケースでは、結婚してから事業をおこしている。シングルで事業をおこすとリスクは大きいが、結婚していれば、たとえ失敗しても衣食住に困ることはない。ゆえに事業で大きな冒険ができるのである。彼女たちはもう既にキャリアウーマンであるので、夫に経済的援助を求めて結婚したわけではない。しかし、結婚により安全と安定を得て、仕事で大きく勝負できるのである。負けたっていいや、思い切ってやってみよう、と思える環境を手にしたといえる。このように結婚を武器にした転身を可能にするには明確な職業意識をもっていることが不可欠であることは言うまでもない。ちなみに芸能界をみても結婚を武器にできる女は、結婚に逃げこまない女であるということがわかる。たとえば元祖ブリッ子と呼ばれていた松田聖子は、結婚・出産により、スーパー主婦アイドルに転身、単なるアイドルから脱皮する。そしてファン層を同性既婚女性にまで拡げた。「生理的共感」という一体感で彼女たちを包んだのである。シングルタレントに対して主婦は冷やかで、結婚したタレントにも主婦は疑いの目をむける。しかし出産すると彼女たちはその女性を突然ヒロインとして認めるのである。松田聖子はその後も、離婚により自立した女というイメージに転身、再婚によって年下の夫をもつ大人の女に転身している。結婚による転身が職業意識とぴったり結びついているといえる。林真理子さんの場合もすでに十分なキャリアと成功を手にしているが、アグネス論争などで既婚女性たちからの反発もあったであろう。それを結婚・出産で完璧なまでにくつがえし、現在はシングル女性向けの雑誌から既婚女性向け雑誌、男性誌まで幅広い場で活躍している。安室奈美恵の場合も早婚といわれるが、デビューが九二年九月、一四枚目のシングル発売の九七年結婚だから五年間はキャリアを積んでいる。大卒女子なら二六歳で結婚というところだから年齢は若くても、職業人としては早婚とはいえない。安室はデビュー以来のばしてきたCD売上げが九六年に入って半分ほどにのび悩んでいる。アイドルとしての座は、OL三〇歳の座と同じようなものだろう。それを九七年の結婚で前年のCD売上げの倍とした。結婚によりアイドルからの転身をはかったともいえる。結婚を望むに転身できる女は、みなはっきりと明確な職業意識をもってしたたかに生きているのである。
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